\(\newcommand{\D}{\text{d}} \newcommand{\I}{\text{i}} \newcommand{\E}{\text{e}} \newcommand{\Prob}{\mathbb{P}} \newcommand{\Expect}{\mathbb{E}} \newcommand{\Var}{\text{Var}} \newcommand{\PAvg}[1]{\left[#1\right]} \newcommand{\Avg}[1]{\left\langle#1\right\rangle} \newcommand{\AvgJ}[1]{\Avg{#1}_{\bm J}} \newcommand{\AvgDyn}[1]{\Avg{#1}_{\text{dyn.}}} \newcommand{\CAvg}[2]{\Avg{#1}_{\left|#2\right.}} \newcommand{\Devi}{\mathfrak{d}}\)

モデルの定義

\(N_E\) 個の興奮性のニューロンと \(N_I\) 個の抑制性のニューロンが相互に結合したネットワークの特性を \(N = N_E + N_I \to \infty\) の極限で調べる. ここで, 興奮性ニューロンと抑制性ニューロンの非 \(N_E/N_I\)\(N\) に依らない数に固定されているとする. これらのニューロンは平均 \(K\) 個のニューロンとランダムに結合され, その確率分布は

\[\Prob \{ J_{kl}^{ij} = J_{kl}/\sqrt K \} = K/N_l\]\[\Prob \{ J_{kl}^{ij} = 0 \} = 1 - K/N_l\]

で定義される. [1]

[1]原著 [vanVreeswijk1998] には確率は \(K/N_k\) と書いてあるがこれは間違い.

それぞれのニューロンの状態は 0 か 1 の二値変数で表現され, \(\sigma_k^i(t) = 1\) (\(= 0\)) は活動 (無活動) 状態に対応する. ニューロンの状態は「バラバラ」なタイミング (後述) で更新され, そのニューロンへの入力 \(u_k^i(t)\) に依って, 状態は

\[\sigma_k^i(t) = \Theta(u_k^i(t))\]

に更新される. ただし, \(\Theta\)\(\Theta(x) = 0\) (\(x \le 0\)), \(\Theta(x) = 1\) (\(x > 0\)) で定義される ヘヴィサイド関数 である. ニューロンへの入力は

\[u_k^i(t) = \sum_{l=E,I} \sum_{j=1}^{N_l} J_{kl}^{ij} \sigma_l^j(t) + u_k^0 - \theta_k\]

で定義される. \(u_k^0\) は外部入力を表し, \(\theta_k\) はニューロンの閾値を表す. \(u_k^0\) が外部集団からの入力を表すならば, その大きさは \(O(\sqrt K)\) のオーダーになるはずである (はじめに 参照). よって, \(u_k^0\) は外部集団との結合強度 \(J_{k0} > 0\) と外部集団の「活動率」 \(m_0\) を使い,

\[u_k^0 = \sqrt K J_{k0} m_0 \qquad (k = E, I)\]

と置く.

集団 \(k\) のニューロン \(i\) はそれぞれ平均 \(\tau_k\) の時間間隔で「バラバラ」に (非同期的に) 更新される. ここでは, 各ニューロンの 更新の時間間隔は平均 \(\tau_k\) の独立な指数分布に従う (つまり, 各ニューロンの更新は独立なポアソン過程である) とする. [2]

[2]更新のタイミングがランダムでないバージョンのネットワークも [vanVreeswijk1998] では解析していて, その統計的な振る舞いは同一であることが示されている.